はじめてのロッククライミング

これは私の話ではなく、今年ピカピカの1年生になった息子の話である。ロッククライミングは私も気になっていたスポーツの一つなのだが、やってみたいけど体力の衰えを実感するのが怖いこともあり、ついつい二の足を踏んでる。

先日、家族サービスということで、南町田にあるグランベリーモールというアウトレットモールに出かけたのだが、そこのモンベルに「ピナクル」というロッククライミングの体験施設があった。この「ピナクル」は高さ9メートル(3階建てぐらいの高さらしい)の人工岩山で、120cm以上の身長と右左がわかれば誰でもクライミング体験(子供1回 500円、大人1回 700円)することができる。

私は息子に「やってみたい?」と聞くと、珍しく「うん」と答えたので挑戦させてみることにした。

挑戦に差し当たり、店員から、ロッククライミングは遊園地にあるようなアトラクションではなくスポーツであること、けがをするかもしれないこと、自分で登ったら自分で降りてこないといけないこと、など、息子と直接話しながらその意志を確認するのだ。

この(いい意味での)脅しを受けて、一度、息子は怖じ気づいたのか「やっぱりやめる」と言い出した。少し残念だったがしょうがないと思いつつも、やっぱりがんばってほしいという気持ちを捨てきれずに、こんな話をした。

「何でも最初は怖いけど、やってみると何でもないことが多いんやで。例えば、この前、公園に行ったときに高いところから一人でジャンプしたやろ? 最初は怖くてためらったけど、一回やったら何回でもできるようになったやろ? 自分でできるとわかったらパワーが湧いてきたやろ? 何でも勇気を振り絞ってチャレンジしたら、その勇気がパワーになんねんで。」

そしたら「やっぱりやる」と言ってくれたので、「よっしゃ、そしたら一人であの兄ちゃん(店員)に"やっぱりやります"って言ってこい!」とハッパをかけたら、本当に一人で言いに行ったので、親ながらびっくりした。いつもなら「いやや」と恥ずかしがると思ったからだ。ひょっとすると、息子も小学生になって何か変わらねばと思っているのかもしれない。

その後、順番を待っていざ本番である。真ん中ぐらいまでは何とか登ったが、途中で行き詰まって身動きがとれなくなった。端から見たら足をぐっと踏ん張って上に手を伸ばせばよいと思うのだが、やっぱり怖いのだろう。足がすくんでしまっているのだ。しばらくそんな状態が続き、「もう登れない」と弱音を吐いたりして、私がもうだめかなと思ったとき、何かを吹っ切ったのか息子は再度登りはじめたのだ。

それから頂上まで登り切って、無事に降りてきた息子は、何か一回りも二回りも成長したように見えた。いつもならくじけるタイミングが2回あったのだが、その2つの壁を自分でがんばって打ち砕いたのである。それが何よりうれしかった。

お店を出ると、息子が「がんばったからジュース飲みたい」というと、私は「ジュースは虫歯になるからお茶にしなさい」という。それからいつものように「いやだ、いやだ」と駄々をこね始める。やっぱり、子供は子供だなと思った。